豪州サウナ事情
オーストラリア生活で困ったのが風呂だった。
ここでの風呂というのは「広いバスタブまたはそれに類するもの」を指す。
僕は無類の風呂好きで、最低でも週に一度はバスタブに浸からないと気が済まない。
長期の旅行中などはそれを超えることがあったが、落ち込みやすい・疲れが取れない・眠りが浅いなど心身に明らかな不調が出てきた。
長期の旅行では移動の繰り返しもあったので、不調の原因はどちらかというとそのせいだと思っていたが、結局オーストラリアでシャワーだけの生活を初めてからも同じような不調が出てきた。
このままでは生活に支障が出る、解決策を探すことは急務だった。
住み始めて2週間ほど経って見つけ出したソリューションは、「サウナに行くこと」だった。
正確にはサウナではなく、スポーツジムである。
通っていた学校から歩ける範囲に安価なスポーツジムがあり、そこにプールやジャグジー、更にはサウナまでもが揃っているとの情報を掴んだのだ。
これは結果的に大正解だった。
週16豪ドル≒1,200円で使い放題という好条件も相まって、週3~4回はリピートすることとなった。
通い出すと面白いもので、サウナという「ご褒美」があると自然とプールにも足が向くし、せっかくだからと気合を入れて泳いだりもする。
結果、良好な精神状態と上半身の謎の筋肉を手にいれる事になった。
面白かったのはオーストラリアのサウナ文化が垣間見れたことだ。
ところが変われば人種も違う、日本の「サウナ感」とまた一味違ったり、はたまた意外な共通点を見つけたり。
とにかく、大変に興味深かった。
まず決定的に違うのは、男女混浴という点だ。
このサウナはジムのプールに併設されているので、必然水着着用が義務となる。
なので特段男女に分ける必要がないのだ。男女比は日にもよるが、ちょうど5:5ぐらいだったかと思う。
カップルでの利用なんかもちらほら見られて、最初は違和感があったが、すぐに慣れた。
むしろ娯楽のレパートリーが少ない厳冬のオーストラリアで、「ジム&サウナデート」というアクティビティが増えたので嬉しかったぐらいだ。
時々目のやり場に困るレベルの水着来てる人が居たのは当惑したけど…(男女ともに)
残念ながら、水風呂はない。
とはいってもプールがあるから必要がないのだろう。
ただ、プールの塩素が半端じゃないくきついので、僕はいつも水シャワーを浴びていた。
客層は若い白人が多かった。
これは肌を他人に見せることを躊躇しない文化が、アジアやアラブでは少ないことも関係しているのだと思う。
日本のサウナって結構なおっさんたちが仕事とゴルフと病気のこと語り合っているけど、向こうではこういう傾向はなかった。
ただ、やはり時間帯で「ヌシ」的な人はいて、これは例外なくおっさんだった。
ルールなんかをうるさく言う人なわけじゃないが、なんとなく「ヌシ」な雰囲気を醸し出すのだ。
英語でいうとatomosphereになるのだろうか、醸し出しているのだ。
この人達は例外なくサウナマシーンに水をぶっかけて自分好みのロウリュ状態を作り出していた。
禁止されているし、スタッフも目をつけていて一度注意しているのを見たのだが、やめる気配はなかった。
なんとなく雰囲気ルールやヒエラルキーが作られるかんじ、日本特有かと思ったけど、人間社会ならどこでも発生するものなのかもしれない。
さすが移民国家というところだが、色々なバックグラウンドの人がやってくる。
一度母国のサウナ文化の話になったことがある。
その女性は旦那さんがフィンランドの出身らしく、サウナについては一家言あるようだった。
曰く、サウナにアロマ水がないどころか、水をかけるのすら禁止なんてありえない、とのことだった。
僕がうちの国でも禁止だよ、マシンが壊れるからね、という話をすると、
「ストーンをたくさん積めばいいのよ!機械まで水が到達しないから壊れたりしないわ!」と、なかなか手ごわい。
さすが本家本元を知っているだけあるな、と思った。
このあとそれを聞いていたトルコ人の男性が祖国のサウナに関して語りだしたのだが、僕の頭の中で「それってトルコ風呂のことか?」という疑問がリフレインしだしたので、内容を全然覚えていない(英語なので集中しないと聞き取れない)
国際問題になるから口が裂けてもそんなこといえないけど。
日本から留学やワーホリでオーストラリアにいる人で、風呂入りたいなと思っている人って意外といるんじゃないかなと思う。
日本の住環境って、最高に風呂環境が充実している。
僕ほどの風呂好きじゃないにせよ、大体の人は今日は久々に湯船に浸かりたいなって日はたまにはあるんじゃないんだろうか。
そういうときに気軽に風呂にアクセス出来ないことは、やはり少なからずストレスだろう。
そんな時、ぜひ最寄りのサウナに行くことをおすすめしたい。
八割ぐらいは風呂欲が満たされるし、明日も頑張ってやろうかなとちょっとだけ思います。
この思い、全豪の風呂好き在留邦人に届け。