下京区コンプトン

下京区コンプトンに住んでいました。

Go to travelキャンペーンの所感

その昔たまに都知事選に出ていた唯一神又吉イエスが当時の世の中を

「社会が来るところまで来た、無茶苦茶で瀕死の状態である」

と形容していたが、僕がいる旅行業界が今まさにそんな感じだ。

 

オリンピックを中心に業界が酒池肉林の大騒ぎになるはずだった2020年は新型コロナウイルスの影響で阿鼻叫喚の地獄と化したのであった。

何しろ割とカジュアルに感染る上に伝染病が世界的に蔓延しているのだ。

大きく依存していた外国人観光客はほぼ全く望めなくなり、数少ない邦人観光客を価格破壊で取り合うハイパーデフレ状態。

減収減益は当たり前、休業廃業倒産夜逃げが当たり前のディストピア、それが今の旅行業界である。

 

そんな旅行業界を(建前上は)救うべく政府肝入りで始まったのが今回の「Go to travelキャンペーン」だ。

 

臨時でゲストハウスの店長をやっていることもあり、今後に関わってくることなので詳しく調べたのだが、このキャンペーン全く詳細が出てこない。

あるのは国土交通省が発表した大学生一年生レベルのpdfが出てくるだけだった。

https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001351403.pdf

 

関係各所にも聞いたが、大手の旅行会社でさえこの内容以外のことは把握できてないとのことだった。

資料には「事務局」という文言がいくつか見られるが、その事務局の所在地や連絡先などは全く書かれていない。おそらく事務局はまだ存在もしていないのだろう。

にも関わらず今月22日からキャンペーンはスタートするようだ。

見切り発車も良いとこである。

 

キャンペーンでは日帰り旅行・宿泊旅行の両方が対象になっているが、宿泊旅行の方だけ要点をまとめてみた。

一次資料自体が非常に曖昧な表現が多く、未確定事項も多いので間違いがあるかもなので悪しからず。

 

【旅行のうちどの金額が補助対象なのか】

①7月22日以降に1泊2日以上の旅行をする場合、1日あたり2万円を上限に35%を還付または割引

②9月1日以降に1泊2日以上の旅行をする場合、1日あたり2万円を上限に35%を還付または割引、さらに15%分の金額の旅行先で使えるクーポンを発行

③補助対象は宿泊費だが、交通機関とセットのツアーなどであればそれも含めた金額が補助対象。

ちなみに夜行フェリー・寝台列車・クルーズは宿泊費とみなして補助対象だが、夜行バスは対象外。座席か寝台かが判断基準の様子。

④クーポンは9月1日以降で発行開始(詳細日時未定)

旅行先の都道府県または旅行先に隣接する都道府県内で、旅行の期間中のみ使用可能。

⑤日数や回数は無制限。終了日は未定。

 

【どうやって補助を受けるのか】

 

①補助申請者は個人または旅行業者が申請を行う。

現地決済の場合は個人、決済を予約サイトなどで事前に行っている場合は旅行業者が申請を行い、還付を受ける。

②申請は申請書、領収書、宿泊証明書、個人情報同意書を準備し、事務局に郵送またはオンラインで行う。

③事務局が書類を確認した後、還付金額が銀行またはクレジットカードに送金される。

④7月27日以降で準備が整った旅行会社から35%分を最初から割引した金額で旅行商品を販売しても良い=この旅行商品を買えば個人で申請する必要がない。

 

 

ざっとこんなところである。

ここからは旅行業に携わる者として、また旅行好きとしての個人的所感。

 

①雑すぎる

例えば、5泊の旅行のうち1泊分と飛行機の場合は対象なのか?近所の宿の一室を居住のために半年借りても180泊の旅行といえば補助されるのか?クオカード付きプランは?決済後のキャッシュバックキャンペーンは?そもそも宿泊施設と旅行者が結託すれば不正の温床になるのでは?

思いついただけでも多数の例外やズルが考えられる。

事務局はこういった数多の例外に苦しめられるだろうし、それに対応してルールや判断基準を足していくことになると思う。

こうなると怖いのは、キャンペーンを見越して予約した旅行が補助の対象から外れる可能性も多いにあることだ。

今出ている条件に当てはまっている旅行を手配しても、それが本当に補助対象になるかは、現時点では誰にもわからないのだ。

 

②煩雑すぎる

これは旅行業者側からの視点だが、手続きが煩雑すぎる。

うちみたいな暇な宿は良いが、一度に大量の人が泊まるホテルなんかでは1組ごとに宿泊証明を発行するだけでもかなりの手間だろう。

領収証でも、旅行会社に提出する分はどの金額書けば良いかもわからない。

前述したルール後付けで補助対象にならなかった人から、旅行業者やホテルに問合せや苦情が殺到なんてことも全然ありえるので、今から業務への支障が怖い。

 

③今ではない

とはいえ、瀕死の旅行業界。お客さんは来て欲しい。でもやはり、今ではない。

感染症は結局のところ、人の移動で広まっていくものだ。

そう言う意味でこのキャンペーンは感染拡大キャンペーンと言っても過言ではない。

特に感染者が続々増えている今、火に油を注ぐ結果は目に見えている。

このキャンペーンで感染者が旅行に行ったとして、誰に一番リスクがあるだろうか?

無論、受け入れの現場で働く僕たちだ。

この仕事は嫌いじゃないけど、命を張るほどの価値はない。

 

 

④得するのは大手旅行会社

このキャンペーン傾いている旅行業界全体の救済のように見えるのだけど、

どう考えても大手旅行代理店が得をするように仕組まれている。

「パックツアーなら交通費も補助対象」ならたいていの人はそうするだろうし、そうなると旅行会社からの申込以外はあり得なくなっている。

旅行代理店は手数料商売なので、金額が大きくなればなるほど儲けも増えるしくみになっている。

しかもインターネットで販売してしまえば、コロナ感染のリスクも全くなくお金が入ってくる。

そのリスクを追うのは前述の通り僕らや交通機関の人たちである。

 

 

結局のところ得するのは僕ではなさそうだし、

変なリスクが上がるならやめて欲しいところだなと思う。

 

飛びついて予約した9月の旅行、なんか嫌になってきたからキャンセルしようかと思っている。