下京区コンプトン

下京区コンプトンに住んでいました。

ユンケル

最近、少し体調を崩していた。

先週、体調を崩していた同僚を病院に連れて行った際に風邪を感染されたらしい。

 

通常、ビタミン摂取と睡眠時間の確保で治るのだが、今回はかなりしつこかった。

3日安静モードを取ったにも関わらずに完治せず、夜勤を迎えてしまった。

夜勤をこなす中で消耗した体力が祟り、夜勤明けのコンディションは最悪だった。

 

夜勤明けは2日休みなのだが、今週の休みは珍しく土日とかぶっていたので音楽フェスに行く予定を入れてしまっていた。

チケットや車両の段取りまで済ましていたのだ。

 

もちろん休み明けはまた仕事なので、仕事に影響が出るような行為は慎まなくてはならない。

しかし、フェスも楽しみたい。

絶対に負けられない戦いがそこにあった。

 

とりあえず、夜勤明けでクラクラとする意識の中、ドラックストアに向かった。

夜勤明けはいつもに増して要らないことや無駄なことを思いつくのだが、その流れで「和田アキ子は大事なライブの前に薬局で一番高いドリンク剤を買って飲む」という話を思い出したからだった。

 

あの和田アキ子が頼りにするドリンク剤を見つければ、この困難を解決出来るのではないかと。

あの鐘を鳴らせるのではないかと。

 

薬局のドリンク剤コーナーはかなり大きく、値段もピンキリだった。

安いやつは三本千円とかだったが、コンディション的にそんなものでは太刀打ち出来なそうだった。

拳銃が三丁あるよりもグレネードランチャーが一発打てた方が良い。

とにかく一撃で仕留めてしまわないと、フェスも仕事も辛いことになってしまう。

 

そんな中、ユンケルコーナーに目が向いた。

イチローも飲んでる!」というユンケルのその隣。

一番端に一本だけ、そいつは鎮座していた。

 

一本三千円。

全盛期のアースウインドアンドファイヤーを思わせる黄金のパッケージがこちらに語りかけてきた。

 

「我を求めよ、さすれば力を授けん」

 

思わずカードで一括払いで買った。

 

パッケージを開けると、唐辛子の入れ物ほどの小瓶だった。

 

一気に飲み干す。

テキーラのような熱さが食道を通り抜けていった。

 

効いたのか?

早めのユンケル。

 

その後はもう眠るしかなかった。

とにかく信じて、なるべく早く眠った。

 

 

目を覚ますと奇跡が起きていた。

もちろん元気100倍とは言わないが、不快な頭痛や関節痛、だるさ、喉の痛みがほぼなくなっていた。

あれほどしつこくまとわりついていた風邪が、一晩のうちに消え去った。

 

その後も蒲郡までの運転や、豪雨の中のフェス、炎天下の大暴れからの帰宅というハードスケジュールも、何の無理もなくこなしてしまった。

 

そんな劇薬が、ドラックストアに普通に売っているという事実。

何か恐ろしい社会の深淵に触れた気がした。

 

 

複雑怪奇な現代社会。

窮地に追い詰められた時は、ドラックストアのドリンク売り場に行きましょう。

数枚の紙幣を生贄に捧げ、黄金の悪魔に助けを求めるのです。

 

「我を求めよ、さすれば力を授けん」