道中より
スーツを着るのは苦手だ。
冠婚葬祭以外で着ることがないため、大変に準備に時間がかかる。
スーツを着るときはまずアイテム探しから始まる。
最後に着たのが半年前なんてこともザラなので、スーツ、シャツ、ベルト、靴、ネクタイ、腕時計、あらゆるものの所在がわからなくなっている。
今回もベルトの所在がわからず、普段使っているものを使わざるを得なかった。
万事この調子なので、洒脱なスーツスタイルなんて格好がつくはずもなく、なんとか体裁を保つのがやっとである。
おまけにスーツは成人式から同じ一張羅、靴は普段は履きにも使っているサービスシューズだ。
大手広告代理店やマトモな会社勤めの人間が多いであろう今回の祝宴に、このナリで顔を出すのは少々気がひける部分がある。
やはりそろそろスーツぐらい買い換えるべきであろうか。
せっかくならテーラーで自分に合ったものを全身揃えで仕立ててもらおうと思っていたが、結局やらないままに数年が経とうとしている。
まあよく考えると、今回僕の格好を視界に入れるような人間はごく限られている。
友人は僕がそういう人間だということは知っているはずだし、特に気にすることもないだろう。
きっと奥さんも寛容な人だろう。
そう願いたい。
今、友人の結婚式の二次会に向かっている。
前々から結婚したいと宣っていたので、本当に良かったと思う。
蒸し暑いけど天気は良いし、きっと素敵な祝宴になるだろう。
普段はリア充爆発しろとばかり思っているけど、たまには幸せな2人を見るのも良いではないか。
ましてそれが友人ならなおのことである。
祝宴の道中、車窓から見える西日に輝く煙突の群れを見ながら、そんなことを考えている。
友よ、おめでとう。