年齢
気付けば28歳になっていた。
ものの数ヶ月のうちに29歳になり、三十路も目前となってきた。
周囲も結婚しだして、妙な焦燥感とともに日々を送っている。
年齢を感じるのは、死んだロックスターの年齢を追い越した時だ。
中学生の頃にパンクロックに傾倒し出した時、シド・ヴィシャスははるか年上だった。
カッコよく駆け抜けて死んでいったパンクスターに密かな憧れさえあった。
大学に入り国内外旅しまくっていた頃、気付けば僕はシド・ヴィシャスの年齢を超えていた。
いつの間にかパンクスターより年上になっていた。
ブラック企業に勤めて脱出の機会をうかがっているうちに、オーティス・レディングより年上になっていた。
一応安定した仕事を得て遊び呆けてるうちに、ジミ・ヘンドリクスより、ジャニス・ジョプリンより、ジム・モリソンより、カート・コバーンよりも年上になっていた。
いつの間にか憧れたロックスター達よりも長く生きていた。
今思うのは、彼らは彼らの人生を燃やし尽くしたのだろうが、やっぱり死んでしまうのは寂しいことだ。
長生きしたいとも思わないが、生き急ぎたいとも思わない。
ピート・タウンゼントは「老いぼれる前に死にたい」と歌ったことを後悔しているという。
多分、老いぼれたら老いぼれたなりに良いことや楽しいこともあったのだろう。