古墳
職場の後輩が家の近くで古墳を発見したと言う話をしていた。
確かに京都はさすが古都というだけあり、各地に古墳が点在している歴史の宝庫である。
僕たちの地元には裏山があり、やはり裏山の中にも古墳が多数あった。
古墳とは名のつくものの、ただの崩れかけた土盛りに近いものがあり、大して管理もされていなかったのが事実である。
小学生だった頃のある日、裏山で遊んでいる時に古墳の中に入ってみようという話になった。
そのエリアの古墳は直径で10m程度のものが数個点在しており、入り口も特にふさがれることなく開いていた。
子供の遊びにはもってこいである。
ジャンケンに負けて入った古墳の中は異様だった。
妙な家財道具は置いてあるし、焚き火の跡もある。
どう見ても人が生活している、もしくはしていた感じで気味が悪かった。
誰がそこで生活をしているかはすぐにわかった。
ある日小学校の陸上部の練習で山に入った時、古墳に程近いところで、全裸のおっさんが川で体を洗っていたのだ。
全裸で。
みんなが悲鳴をあげる中、僕及び友達数人は確信していた。
あいつは古墳に住んでいる奴に違いない。
古墳に住む、野生のホームレスなのだ、と。
一応言っておくが21世紀初頭の話である。
特に危害を加えるでなく野生のおっさんは去っていった。
陸上部の練習も夏の終わりまでそこで行われた。
今なら確実に案件になっているが、その頃は全然騒ぎにもならずに終わっていた。
今思えば、あの頃はそういう曖昧さが許容されていた気がする。
積極的に介入はされないにしても、放っておかれるぐらいの自由はあったのだ。
例え住所が古墳の中であってもである。
そんな曖昧さが今日には欠けていると思うし、当時いた曖昧な暮らしの人たちは一体どうしているのだろう、と気になることがたまにある。